ハリドワールはヒンドゥ教の聖地である。日本ではヨガの聖地としてのリシュケシュの方が有名かもしれないが、デリーからリシュケシュへ行くとき隣町のハリドワールを通過する。イスラム教で言えば「メッカ」、キリスト教の「エルサレム」みたいなものなのだと思います。ヒンドゥ教の聖地としては他にバラナシなども有名です。ハリドワールとヒンドゥ教の関係についてご紹介していきたいと思います。 #ちなみにこれからご紹介することは、私が実際に体験したことや #私の周囲の決まりごとであって、全てのインド人あるいはインド全土の #話ではないことを予めお断りしておきます。ハリドワールとは「ハリ=神様」「ドワール=ドア=入り口」という意味で、地名そのものに「神様へのドア」「神様に会う場所」といった意味がこめられています。ハリドワールにはいつでも好きなときに出かけて巡礼(沐浴)をすればいいのですが、そんなに近所なわけでもないので、人生の節目に出向くことになります。まず、女子は結婚が決まったら、結婚式をする前に必ずハリドワールに出かけて沐浴をします。結婚する前に心と体を清めるためです。また、人が亡くなると火葬しますが、その骨を持ってハリドワールに行き骨をガンガー(ガンジス川)に流します。ガンガーの聖なる水の作用で人の骨はすぐに砂に変わると信じられています。ガンジス川の水は何年経っても悪くならない聖水です。ハリドワールには記帳所があります。ハリドワールに行ったときには必ずこの記帳所に寄り、帳面(ノート)に日時、住所、ハリドワールに来た理由、一緒に来たメンバーなどを管理者に記帳してもらいます。この管理者は代々「帳面」の管理者を継承しております。また葬儀の際は葬儀に立会います。記帳や葬儀の立会いを生業としており、その際のお布施で暮らしている人々なのです。そして管理者によりそのノートは数百年分が保管されているらしいのです。ですから父方のルーツはそのノートを見れば誰でも辿ることができるのです。その管理者は「ゴートラ」ごとに担当が決まっています。ゴートラとは血族(親戚?)ごとに付けられたグループ名のこと。祖先を同じにするグループというようなイメージです。姓によってどのゴートラに属するのか決まっています。ヴァルナやジャーティとはまた違うグループ分けなのです。 #「ヴァルナやジャーティとは違う」わけですが、出自という #点では全く無関係ではないと思います。 #実際のところゴートラがどのように構成されているのかは #私にもよくわかりません。私は自分のお父さんが亡くなるまで自分のゴートラがなんなのか知りませんでした。それほど日常生活では意識されないものです。ちなみに私の姓はmehraで所属するgotraは「シブゴートラ」(シヴァ神のグループ)です。インドでは「同じゴートラ同士は結婚できない」という決まりがあります。もちろん私が結婚するときにもゴートラの確認があったはずです。インドはお見合い結婚が多いので、最初から同一のゴートラの相手を紹介されるということがありません。 #もちろん私の時は両親が確認をしていたと思います。私は自分が結婚する時点では自分のゴートラを意識することはありませんでした。自分のゴートラを知らなかったぐらいですから、他にどのようなゴートラがあって、どの姓の人がどのゴートラに所属するのかは全くわかりません。⇒人が死んだらガンジス川に流すって本当ですか?⇒インドはお見合い結婚が多いって本当ですか?⇒インドの結婚式⇒インドのパスポートの謎(インド人のとっての姓)よく使われるジョークで「ハリドワールいくけど一緒に行く?」「どうせ死んだら行くんだから、今いかなくていいよ。」というのがあります。 #ニュアンスがうまく伝わるでしょうか?私たちに一番大きいハリドワールのイメージは家族の遺骨を埋葬する場所というイメージです。インドのパスポートの謎でも触れていますが、インド人にとって姓は非常にデリケートな側面があります。自分で書いておいてなんですが、ゴートラに関しても同様の側面があります。単に「話題作り」で悪気なく軽い調子で、お知り合いのインド人にこの話題を持ち出すというのは避けた方がいいと思います。